『真鍋博回顧展に行ってきました。真鍋さんの原画を見るのは初めてですが,いろいろな発見のある素晴らしい展覧会でした。以下は出展されていたものの覚え書きです。
○油絵…板に油彩で着色しているものが多かったです。その不思議な構成と鮮やかな配色はさすがです。
○アニメーションの原画,シナリオおよびそのアニメのビデオ上映
○舞台美術関係の資料…舞台装置のデザイン,ポスターやパンフレット等
○風刺漫画
○ミステリマガジンの表紙…写真に墨やポスターカラーで描いたイラストを重ねたもの。
ドライヤーの写真が馬になったり,洗濯ばさみが昆虫になっていたり…たいへん美しい。
○ポスター…細部までこだわった作品の数々。わずか3mmの人影もちゃんと手足があり様々なポーズをとっている。
○本の表紙
星新一関係…「声の網」,「ようこそ地球さん」,「夢魔の標的」(ハヤカワJA文庫版用色指定の原画)などの表紙数点およびそれが使われた文庫本など
筒井康隆関係…「七瀬ふたたび」などの表紙数点およびそれが使われた文庫本など
その他多数の本の表紙原画
○星夫妻とパリで撮った写真
○挿し絵
小松左京「異常気象」のカット多数
○真鍋さんの自著…絵本,画集,エッセイ集まで幅広く。
展示品とは別に自由に本の中身を見ることができるコーナーあり。「真鍋博のプラネタリウム」等(星作品のカット集)
絵本「星をたべた馬」の原画…めずらしく黒の輪郭線のないイラスト。暖かく優しい配色が目を引く。
「自動車じどうしゃ」の原画…細部まで細かく正確に書きこまれている。原画はすみ線のみ。
「自転車賛歌」…ユニークな自転車のイラスト多数。
「真鍋博の鳥の眼」…そのすごさを言葉で表現するのは無理です。日本の各地を上空から見下ろしたもの。
細かく正確な上,建物や山,川,鉄塔あらゆるものの名前が書きこまれている。
「絵で見る20年後の日本」「2001年の日本」等,未来図
○その他細かな資料
TVのインタビュー番組のビデオ上映あり。
万博記念たばこのパッケージデザイン,国際児童年記念切手他。
年譜,写真も充実。表紙やポスターに印刷されたものを見ただけでは気がつかなかったようないろいろな技法のあとを見ることができたのもよかったです。
特にスミ線にトレーシングペーパーを重ねて色指定してある原画には釘付けになってしまいました。
星さんの文庫本でも「おのぞみの結末」や「悪魔のいる天国」以降の表紙と旧「ボッコちゃん」や「ようこそ地球さん」は色使いなどが違っています。「ポスターカラーでも,色鉛筆でも印刷機にかかると印刷インクにかえられてしまう」ということから,「なら,はじめから印刷表現を想定し,色もインク4色の組み合わせで出せる色を原稿に指定すれば原画と印刷物の差はなくなる」ということから始まったそうです。その色指定の細かさは1枚の絵に何十ヶ所におよび,さらに校正刷りに対しても何十ものチェックが入っていました。
こういう風にして,あの,「誰が見ても真鍋さん」という独特のイラストになっていくんですね。
以上,美術館で販売されていたパンフレットと記憶をたよりにできるだけ思い出してみました。
でも,絵を文字で伝えるのって難しいですね。真鍋さんの展覧会が全国各地で開催されることを祈ってます。』