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ウインクホシヅル 「コミック☆星新一」の魅力 前編 by かめきちさん ジャンプホシヅル
〜マンガで楽しむ星さんの世界〜


「コミック☆星新一 午後の恐竜」編
 秋田書店から「コミック☆星新一」という本が刊行されていることは星新一ファンの皆様の中には既にご存知の方も多いかと思います。
 ご存知でない方もタイトルからご推察のことと思いますが、マンガ化した星作品をまとめた作品集で、収録作品はすべて雑誌「ミステリーボニータ」に掲載されたものです。
 平成15年の夏に出版された第1弾「午後の恐竜」に続き、第2弾「空への門」が、平成16年に出版されました。
コミック☆星新一 午後の恐竜
その帯

( 画像クリックで拡大 )。

 個人的には小説がドラマ化やマンガ化されると原作の持ち味を損なうことが多いというイメージが強く、この「星作品のマンガ化」にもあまり期待感がなかったのが本音なのですが、実際に読んでみると、いい意味で裏切られた思いがし、カルチャーショック的衝撃を受けました。
 18作の中には、マンガという手法によって原作を忠実に再現したものだけでなく、新たなエピソードや解釈をつけ加えられたものもあり、いろんな意味でバラエティにとんでいて、どれも充実した内容になっています。
「あくまでも個人的な見方にすぎませんが」とお断りした上で、作品の紹介をかねながら、この場をおかりして、私なりの感想を披露させていただこうと思います。

温泉マロ

 なお、ちょっとした遊び心といいますか、マンガ化された作品と原作との比較の一つの目安として、「アレンジ度」というものをつけてみました。
「アレンジ度」の☆の数が多いものほど、マンガ家さん独自の工夫が加えられている点が多い作品であるという私なりの解釈です。
 ☆の数については、1コは「ほぼ原作どおりの作品」2コは「原作とは異なる何らかのテイストが加えられている作品」3コは「原作にないエピソードが新たに加えられている作品」4コは「原作のシチュエーション自体に手を加えてある作品」というのが私なりの基準の目安です。
 3コ、4コの作品についてはすんなりと決まったのですが、1コにするか2コにするかでは迷った作品もいくつかありました。
 どのあたりで迷い、どのあたりでこう決定したのか、そういった点にも思いをはせていただきながらレポートを楽しんでいただければ幸いです。
 一応念のためにお断りしておきますが、もちろんこの☆の数は作品の優劣とは全く無関係です。
「アレンジ」があるものもないものもみなそれぞれにすばらしく、優れた作品ぞろいであることはぜひ強調しておきたいと思います!

居眠りマロ

 ちなみに、「ショートショートの粗筋やオチをあかすのはヤボ」との思いから、ここでは原作に関しては収録本のタイトルを紹介するだけにとどめさせていただこうと考えました。
 ですが、そうはいいましても、原作とマンガ化作品の比較の上では、どうしてもネタバレ的な内容も多少含まれる可能性はなきにしもあらず・・・。
 その点はなにとぞご寛容くださいますようお願いいたします。(以下、画像撮影協力・プヨ氏)

Story-1 「ボッコちゃん」 JUN
原作「ボッコちゃん(新潮社)」収録
アレンジ度☆☆☆
『コミック☆星新一 午後の恐竜』 Story-1 「ボッコちゃん」 JUN  星作品の代表作とも言うべきあまりにも有名な作品ですね。
「理想的な美人」ボッコちゃんが実際のマンガではどんなタイプで描かれるのかというところにまず一番関心が向かうのではないでしょうか。
 この絵のボッコちゃんが読者自身の中のイメージに合うか合わないかという点で作品に対する評価も変わってくるかもしれませんね。私としましては、「美人というにはやや幼さの残るロリータ風ボッコちゃん」、意外性もあり、悪くないなぁと思いました。
 ボッコちゃんが飲んだお酒をマスターがどうやって回収するのかというあたりの絵解きもうまくできているように思われます。
 種類の違うお酒は混じったりしないのかな?という疑問もなくはないのですが、それは「内部」でうまく処理されているという解釈で(笑)
 原作のマスターは冷静でクールな印象なのに対し、マンガのほうでは、若くてイケメンでややナルシーな人間味あるイメージなのもまた面白いですね。
 ボッコちゃんに恋しちゃう男性に原作にないエピソードが加えられているのも、原作のシンプルさとまた違った味を出していると言えるかもしれません。
Story-2「金色のピン」 川口まどか
原作「ノックの音が(講談社)」収録
アレンジ度☆☆
『コミック☆星新一 午後の恐竜』 Story-2「金色のピン」 川口まどか  個人的には「ノックの音が」の中でもとても気に入っている作品の一つです。
 マンガのほうも、無駄なくピシっとまとまっていて、いい仕上がりだと思います。
 唯一原作と異なるテイストが加えられているところといえば、原作では、最後まで優位に立って、おとなしい文江を見下しているようなイメージだった由紀子が、マンガのほうでは、曽根を巡って文江に嫉妬めいた感情を抱いていたというふうに描かれている点でしょうか。
 女性の心理をついていて興味深く感じられましたが、原作のシンプルさのほうも星作品らしくていいかな、という気がします。
「長髪のほうは純情な役で、パーマのほうはドライな役」(「きまぐれ星のメモ(角川書店)」収録の「あれこれ考える」より引用)という星さんのご指摘がありますが、このマンガにもその法則があてはまっているといえそうですね。
Story-3「天使考」 木々
原作「ようこそ地球さん(新潮社)」収録
アレンジ度☆
『コミック☆星新一 午後の恐竜』 Story-3「天使考」 木々  ショートショートと呼ぶにはやや長めで、オチのどんでん返しの面白さよりもむしろエピソードの楽しさで読者をひきつける作品かもしれません。
 正直いって、私にとっては星作品の中では特別に印象の強い作品ではなかったのですが、このマンガ化をきっかけに読み返してみると、なんともコミカルで、人間社会に対する風刺も効いていて、楽しさに満ちた作品であるということを改めて認識しました。
 星作品の魅力には「文字で表現されるからこその面白さ」もあると思うのですが、この作品の場合は、視覚的な表現にピッタリの内容といえるかもしれません。
 ミカエルとガブリエルが「現代風イケメン」に描かれてるというのももちろん大事なポイントの一つですね(笑)
 付加的なエピソードもほとんどなくほぼ原作どおりのストーリーが現代的な画風で描かれていながら、そこに全く違和感がないところに、時代が移り変わっても古さを感じさせない星作品の偉大さを感じます。
Story-4「殺し屋ですのよ」 かずはしとも
原作「ボッコちゃん(新潮社)」収録
アレンジ度☆☆☆
『コミック☆星新一 午後の恐竜』 Story-4「殺し屋ですのよ」 かずはしとも  これも星作品の代表作というべき有名な作品の一つ、今までに何度もドラマ化、アニメ化などされていますね。
 原作はショートショートという性質上、最低限のエピソードでまとめられていて、そのスピード感が魅力となっているように思われますが、やはりそれではドラマ化などの場合は物足りなく感じられるのか、何らかの肉づけが加えられている場合が多いようです。
 このマンガの場合、「殺し屋」の姿と「もう一つ」の姿で同じ人物に接するというストーリー展開になっていますが、髪型とお化粧を変えただけで別人のように変身できてしまうという点にはちょっと無理があるような気がしました。
『コミック☆星新一 午後の恐竜』 Story-4「殺し屋ですのよ」 かずはしとも
(実際、マンガの中では、両者は別人と思えてしまうほど目鼻立ちも違って描かれていますし・・・)
 また、「殺し屋」が一瞬気弱そうな表情を見せるシーンがありますが、私としては「殺し屋」には徹底して毅然としたビジネスライクな態度でいてほしかったので、この点についても違和感を感じてしまいました。
 もちろん、エヌ建設の社長さんの言葉どおりに「こんな小娘が」という意外性を強調しているのでしょうし、それも見方によっては成功しているようにも思われますので、そのあたりは好みの差ということになると思います。
Story-5「おーい でてこーい」 鯖 玉弓
原作「ボッコちゃん(新潮社)」収録
アレンジ度☆☆
『コミック☆星新一 午後の恐竜』 Story-5「おーい でてこーい」 鯖 玉弓  これもまた星作品の代表作ですね。
 星さんご自身はこの作品について、「(この作品を書いたころは)公害という言葉も概念もなかったし(中略)将来それが大問題になるなど、考えもしなかった」(「きまぐれエトセトラ(角川書店)」収録の「いわんとすること」より引用)とおっしゃっていますが、星さんの意図に反してこの作品にそういったメッセージが加わってしまうのは、現代では避けられないことかもしれませんね。
 この作品の場合、原作の「文字でこそ表現することのできる無限の広がり」をいかに絵にするのかという点が難しいように思いましたが、具体的にモノを捨てる描写はごく数コマでしか描かないという方法をとることでそれを成功させているように思いました。
「みんなの軽はずみな行動を危惧する青年」が出てくるところが原作との違いですが、彼が結局その後どうしたのかが描かれずに終わってしまっているところにはやや物足りなさを感じます。
Story-6「午後の恐竜」 白井裕子
原作「午後の恐竜(新潮社)収録」
アレンジ度☆☆
『コミック☆星新一 午後の恐竜』 Story-6「午後の恐竜」 白井裕子  このコミックス全体の表題ともなっている作品ですね。
 マンガ化するのはかなり難しいと思われる壮大なテーマの作品ですが、「リアルに見えるけれど実は蜃気楼のようなもの」というあたりもわかりやすく表現できていて、原作の世界観がよく描けていると思います。
 淡々と進行する中でひたひたと押し寄せてくる恐怖という原作のイメージが、マンガを通してはっきりと伝わってくるところはすばらしいですね。
 ラストの幕切れもうまく描けていると思います。
 ラストシーンが、原作では主人公一人の描写で終わっていますが、マンガでは「すべての生命」に置き換えたセリフになっているところにオリジナリティを感じました。
Story-7「現代の人生」 有田景
原作「ノックの音が(講談社)」収録
アレンジ度☆
『コミック☆星新一 午後の恐竜』 Story-7「現代の人生」 有田景 「午後の恐竜」の収録作品の中で一番原作を忠実にマンガ化した作品といえそうですね。
 原作が収録されている作品集「ノックの音が」に収録されている作品はすべて、星作品のショートショートとしてはやや長めで、具体性があり、ストーリー性にも富んでいるのが特徴なので、新たなエピソードをつけ加える余地が少ないという面があるせいかとも思いますが、セリフもストーリー運びもほぼ原作どおりという徹底ぶりが、逆にこの作品の個性となっているように感じられます。
 伏線を効かせながら、ハラハラさせておいて最後の数行でキチンとオトすという原作の持ち味が十分に生かされていて、とてもよい仕上がりだと思います。
Story-8「生活維持省」 志村貴子
原作「ボッコちゃん(新潮社)」収録
アレンジ度☆☆
『コミック☆星新一 午後の恐竜』 Story-8「生活維持省」 志村貴子  ラストが、原作ではあくまで現在の仕組みへの無条件の肯定を思わせるセリフで終わっているのに比べ、マンガのほうはややシニカルなセリフで締めくくられている点にオリジナリティを感じました。
 いずれにしても、「このシステムはあくまですべての国民に平等」という点が徹底しているというところは共通していますね。
「平等」というのはいいことなのでしょうけれど、それがすべて完璧に、あくまでも淡々と行われていくことに、逆に非人間的な怖さのようなものを感じさせられます。
 それがこのラストでうまく表現されていると思いました。
 マンガの感想からはちょっとそれますが、今の日本の社会はあえて「調節」などせずとも少子化のため人口が減少しつつあり、この作品の理論でいう「理想」にどんどん近づいているはずなのに、連日悲惨な事件が数多く報道されているのを見るにつけ、現実は随分違っているなぁ、という気がします。
 でも、逆にそれが、人間が人間である証拠といえるのかもしれませんね。
Story-9「夜の事件」 小田ひで次
原作「きまぐれロボット(角川書店)」収録
アレンジ度☆☆
『コミック☆星新一 午後の恐竜』 Story-9「夜の事件」 小田ひで次  原作では最初に「ロボット」とはっきり書かれていますが、原作のストーリーを知らずにマンガで初めてこの作品を見た場合、この女の子が人間ではなくロボットだとわかるまでにどのくらい時間がかかるものだろうか、という点が興味深く感じられました。
 まぁ最初は気づかなかったとしても、「グラグラグラ・・・」とか「バジッ」のあたりで大体見当はついてしまうわけですが。
 女の子が「遊園地のロボット」にしては随分素朴な外見をしているのが「ロリータ風ボッコちゃん」とはまた違った「意外性」があって面白いように感じられました。
 ロボットの外見のほうはともかくとして、キル星人の外見のほうは、原作の描写のような凶悪さが全く感じられず、むしろ愛嬌のある姿に描かれていますね。
 これは、ファンタジー風に仕上げようという意図があったのか、それとももともとこういう画風の持ち主でいらっしゃるからなのか、どちらなのでしょう。
Story-10「箱」 小田ひで次
原作「おせっかいな神々(新潮社)」収録
アレンジ度☆☆☆☆
『コミック☆星新一 午後の恐竜』 Story-10「箱」 小田ひで次  このコミックスの中では唯一、同じマンガ家さんの作品ですね。
 画風自体も純和風といった感じですが、ストーリーも日本の庶民的な生活を舞台に展開されていて、原作の持つどこかあかぬけた雰囲気とのギャップが大きく、それがまた読者の意表をつく面白さになっているといえるかと思います。
 主人公が男性から女性に変わっているのも大きな違いですよね。
 発想の転換というのでしょうか、とても新鮮さが感じられました。
 主人公の直面する悩みが、原作では箇条書き風にサラリと書かれているのに比べ、マンガのほうでは具体的に表現されていて、それだけ読者に身近な感じを与えているのではないでしょうか。
 個人的には原作のほうの星作品らしいサラリとしたストーリー展開も気に入ってはいるのですが、両者を読み比べる楽しさが一番多い作品といえるかもしれません。
 ラストで、原作のほうはあくまでも友好的な態度だったのに対し、マンガのほうではちょっと「苦情」を訴えるシーンがあり、この点もまた両者の違いかと思います。
 個人的には原作のほうが好みですが、これも読者それぞれの感じ方の分かれる点かもしれませんね。
(以下、後編・「空への門」編へ続く)トゲツル
画像は全て「コミック☆星新一 午後の恐竜」(秋田書店)から引用させていただきました。

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