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ウインクホシヅル エヌ氏とエストレラ博士の名前の謎 ジャンプホシヅル
エヌ氏誕生までのいきさつ。


エヌ氏とエストレラ博士の名前の謎
参考書籍:新潮社「星新一の作品集6」の付録 『星くずのかご6』

「星くずのかご」No.6には、単行本未収録作品「壷」が掲載されていますが、「壷」が短篇集に収録されなかった理由のひとつが、主人公スタルノバスのネーミングの問題。
 ※「壷」は、雑誌「海の世界」昭和41年1月号に発表されたもので、『つねならぬ話』の「壷」とは別作品。

『』は星さんの文章から引用。

『スタルノバスという人名。star(星)uno(スペイン語で一の意味)nova(新星)をくっつけたものである。こういうお遊びを作品中に持ち込むのは、好ましくないという心境になっているのだ。
 ついでに書いておくが、ワニレーニというイタリー人のごとき人名を思いついたこともあった。ワニを重ねると日になり、レーニを重ねると生、全部で星になる。しかし、作品に登場させるつもりはない。』
 ※レーニの「ー」は縦書き。実際に書いてみよう。

『もっとも、作家になってまもないころの「誘拐」という作品のなかで、エストレラ博士というのを登場させた。スペイン語で星という意味だ。カタカナの人名の初出現。しかし、お遊びの点が気になるし、長すぎもする。数回の試行錯誤をくりかえしたあと、ちぢめてエス氏とやってみた。そう悪くない。

 それから、アルファベットをあれこれ使っているうちに、エヌ氏に落ち着いた。発音もしやすいし、さりげなくていい。なぜN氏にしないのかというと、アルファベットの大文字というやつは、日本文にまざると目立ちすぎ、印象が強く、私の意図に反するからである。

 かくしてエヌ氏を多用することになった。私の目標はストーリーによって人間を再検討する点にあり、人物描写を通じてでないから、これでいいのである。エヌ氏の出現で、ショート・ショートが非常に書きやすくなった。いちいち主人公の名前を考えないですみ、そのぶんのエネルギーが発想とストーリーに使えるのである。』

『そばの英和辞典をひいてみた。』(中略)『目を走らせていると、novelという語が出ていた。訳にこうある。1〔形容詞〕斬新な。新奇な。珍しい。2〔名詞〕小説。

 1のほうが2より使用頻度が高いのである。私は語学に弱く、ノベルといえば小説という名詞に使われるほうがぐっと多いとばかり思っていた。

 私の本名は親一で、新一は筆名である。としをとったらこの筆名を持てあます形になるのではないかと気にしていたが、これからは原稿に署名するたびに、自戒の役に立たせることにする。「小説とは斬新なもののことを称するのだ、それを忘れるな」と。頭のぼけるのをおくらせられるかもしれない。また、エヌ氏のNは、ノベルのN。』

 ※資料はホシヅルさんからいただきました。お礼を申し上げます。ありがとうございました。

 ↓こちらは一般的に知られている、サンケイ新聞のエヌ氏の解釈。

「エヌ氏は、この作家の倦怠であり、ペシミズムであり、こっけいな愚かしさであり、それを見つめる冷たい目である。エヌ氏は、ノーマルで、ノーマッド(遊牧民)で、ノーボディ(だれでもない)で、しかも私たちに親しいだれかなのである。」(光・サンケイ新聞)

 人物描写に対する星さんの考え方をもうちょっと知りたい方は、『きまぐれ博物誌』「人間の描写」を読んでみましょう。

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